乱歩賞直木賞W受賞作を再読してみる。

okamoto20042005-02-08

最近、昔読んだ本や観た映画をネットで検索するのが楽しい。
パブリックな情報はどうでもよく、わんさとある日記サイトなどの個人的感想を読んではふむふむ言っているのである。
特に何の研究でもない。
好みでなかった作品を評価した文章に出会えば「えー?あれを面白いと思えるわけ?・・ああ、この人はまだ高校生か、なるほど、まだまだ青いぜ」などと一人納得したり、好みの作品が絶賛された文章に出会えば我が意を得たりとばかり、ニコニコしているというたわいのない気晴らしである。
先日、一作の世間的評価のとても高い小説を検索してみた。
『テロリストのパラソル』藤原伊織
ご存知の方も多いと思うが第41回江戸川乱歩賞、第114回直木賞をW受賞した作品である。(検索で初めて知ったが、この作品は他に1995年 文春「ベスミス」1位、1995年 宝島「このミス」6位、2000年 20世紀 文春「ベスミス」19位にも選ばれているらしい。)
私がこの作品を読んだのは文庫化された時だった。帯に踊る「史上初!乱歩賞&直木賞W受賞作」の文字にかなりの期待をもって購入した。
ここからの鍵カッコ内は作品の内容を表現したものではなくただ単に私の読書中の心の言葉であり、感想とも呼べぬ不当な中傷以外の何者でもない事をお断りしておく。
「・・・なんかリアリティーがないっつーか、この主人公のバーテンダー、カッコつけすぎっていうか、カッコつけるのはどうでもいいんだけど、ハリウッド映画の字幕か、このセリフは。なんで翻訳口調?村上春樹村上春樹口調で元天才ボクサーでアル中?なめてんのか、このやろう。うわーやっちゃったよ、ヒロイン、昔付き合ってた女の娘だって。やっぱりかつて好きだった女性ともう一度っていうのは中年男性のファンタジーなのですかー。でも若い方がいいから、その娘にしたんですよね、きっと。そしてその娘から惚れられてるじゃないですか!アル中のおっさんが!・・キモっ。夢だー、作者の夢の世界が広がってるよー、ひー。おっさんの願望が爆発だー。解決もウソくせー。こんなんじゃマンガのマスターキートンの方がリアリティーあるっつーの。・・やっぱ、賞取る作品って面白くないってよく聞くけど、これもそうだったな、ポイッ」
私はこの作品が好みではなかった。だからストーリーもいまいち覚えてない。
若かりし私に、カッコ内文末のような「賞を取る作品」=読者とは乖離した作品という思い込みがあったことは告白しておく。また、実際、鳴り物入りの受賞作品を幾つか読み、賞の評価は概ね眉唾であることを経験していた。
そして、時を経て私は先日グーグルで検索したのだ。
私は何故そのような自分の好みでない作品を検索したのか。
悪口が読みたかったのだ。(下劣だな<自分)
だが、私の予想を裏切り、この作品は絶賛されていた。ネットで日記を書く人は出版関係者じゃない。今回、検索で引っかかり読んだのは無名の人々の個人的な日記なのだ。しかしそこでも「主人公、カッコよすぎ」などといった絶賛の嵐なのである。
・・・・これは・・・。
もしかして・・・。
若かりし私の目は腐っていたのだろうか?「賞を取った作品は面白くない」との固定概念から結論を先に決定し、実際に読んだ自分の感性さえ捻じ曲げ批判の為の批判を弄するよくいる訳知り顔インテリ愚者だったのだろうか。読んだ時は文庫本が平積みされていたのでおそらく九八年、二十四歳。ありえるかも・・。好み偏ってたし。
そんな不安と共に「テロリストのパラソル」を今から再読してみる。
もしも再読後、目から鱗だった場合「俺はゴミ蟲だっ!」との書き出しから始まる「俺の目は節穴」という新しい日記サイトがオープンします。よろしくです。