ポニョを観てきました(主観的な感想)

ストーリーの破綻とか、そもそもクライマックスが描けてないとか、後半に行くほど追い詰められた宮崎監督の顔がちらついて映画に集中出来ないとかは、もう別にいいんです。
日本が舞台じゃなければもっと素直に受け入れられたんだろうか。
そんな気がします。
最初の方に、ビンに体がハマってしまったポニョを主人公の五歳児が助けようとして、ポニョが内部にパンパンに詰まった状態のビンを石で叩き割るという描写があります。
僕らの知る現実世界では、ポニョはかなりのダメージをこの行為によって負うはずです。
「だめだ!五歳! そのやり方では死んでしまう!」
このシーンを見た瞬間、僕の脳裏に浮かんだ言葉です。
また直後、そこに海があるんだから海の水をバケツに入れりゃいいものをわざわざ水道水でポニョを飼おうとするのも「ダメだ!五歳!」と叫びそうになります。
でもこれ、舞台が日本じゃなくて例えばハウルみたいなファンタジー世界なら別にこんなこと僕も思わずに「そういう世界なのね」で済んだと思うんですよね。
他にも山盛りにあるんですが、特に言えば僕の主観では主人公の母は気が狂っていると思いました。そういえば「千と千尋」の豚になっちゃうパパとママも、僕ら観る者をかなり不安にさせるキャラクターを持っていました。
もしかして、近年の宮崎監督には子供にとって両親というものは「不気味なもの」「傍若無人なもの」「理解不能なもの」である、という主張があるのかも知れません。(「神経症の時代」というキーワードを宮崎監督は以前から何度か口にしておられるのでそういう意図なのかも知れませんが)
この不安な両親達も現代日本が舞台じゃなければ「そういう両親なんだ、へー」と特に何も思わなかったと思うのです。
僕が気が狂っていると思った五歳児の母の常軌を逸した行動も、例えばラピュタのドーラおばさんが同じ事をやってれば「カッコいいなあ」で終わってたと思います。
なんというか、自分の中のフィクションレベルをどの当たりに設定して理解すればいいのか、この映画がどのレベルで嘘をつこうとしているのか、なかなか難しい映画でありました。
あと僕カエルがとても苦手なので、ポニョが半漁人化する度にゾッとしてしまって主人公二人に全く感情移入が出来なかったという個人的事情もあります。昔「スペースバンパイア」という普段は美女、その正体は人食いエイリアンというSFホラー映画がありましたが、僕にとっては半ばそういう作品でした。